戦え!生きるために!



4月になって二週間が過ぎ、ようやく後半に差し掛かろうとしている。同時にそれは僕が今の仕事について二週間が経ったことも意味する。

別にやりたかった仕事ではない。その道しかなかっただけ。言うなれば家業とでもいうのかもしれないが、かといって跡取りみたいに将来が約束された道を歩いてるわけでもない。単に一本道だっただけ。

かといって悲観的になるわけでもない。今の仕事は誰もが出来ることじゃないし、僕なりにプライドは持ってる。それでもこの道を歩き続けることに対して疑問に思わないわけでもないんだ。

本当にこの道が自分の全てなんだろうか?
そう思うほど僕は今の仕事を上手く出来ていない。
他の兄さんたちは上手く仕事をこなしてるのに。

僕たちの仕事は新しい契約を取ってくること。去年までの契約先は使えないから、どうしても新しい契約が必要なんだ。
そして仕事が上手くいってないということは、察しの通り僕は契約を取れてない。

誰かと比べるのは良くない。
まだ二週間が経ったばかりだ。
何度もそう言い聞かしてる。誰にも言われないから自分で言い聞かしてる。


いけないいけない。
最近、気が付けば自己嫌悪に陥ってる。これじゃまた昨日と同じだ。
今日こそ自分の殻を破るんだ。


辿り着いた一軒家。
動悸が止まらない。けれども震えてるわけではないのが分かる。
なんだかいけそうな気がする。
そうか、今日ここで歓喜の瞬間を味わえるために今まで苦労してきたんだな。
そう思いながら、一瞬ブルッと身震い。
けれどもそれは追い込まれた僕が作った幻だったとすぐに分かってしまう。

出てきた家主はどうみても平和的な会話が出来そうな人ではなかった。
手には何か分からないけど、掃除で使うような棒を持っている。そして明らかに不機嫌だ。
無理もない。僕らの見た目はこの辺の人たちにとっては敵意を持たれてしまうのだから。

どうしよう。。
でもさすがにここで帰ったら逆に失礼だし、また自己嫌悪のループを繰り返しちゃう。
それにもしかしたらすごく良い人かもしれないじゃないか。そういえば今日の占いで「見た目で判断してはいけない」って書いてた気がする。
けれどもやっぱりこれも僕の妄想だったと分かるのにさほど時間はかからなかった。

勇気を出して近付くもすごい勢いで棒を振り回され、危うく当たりそうになった。
なんて人だ!今の時代にこんな人がいるのか!?
SNSでよく見かけるけど、実際に目の当たりにする日が来るなんて。。ある意味、ラッキーかな。
いや違うよ。。どうしてこんな日にこんな人にはちあうんだ。

そんなことを考えてたかは分からないけど、気が付けば僕は一目散に逃げていた。
不思議と落ち込んではなかった。それよりも興奮してたと思う。ビックリする気持ちとすごい人を見つけた気持ちが混じってる。
有名人に出会うときってこんな感じなのかな。

何故かは分からない。
分からないけど僕はもう一度、その家を訪ねた。
逃げちゃダメだ!って鼓舞したわけではない。意地になってたわけでもない。まるで吸い込まれるような気分ってのが一番近いと思う。

分かってることは一つだけあった。
結果は同じだってこと。
絶対に門前払いになるってこと。
僕の予感は当たるし、当たった。
家主の棒は当たるし、当てられた。

今度こそ、僕はその場を立ち去った。
猛スピードで立ち去った。
そこで気付いたんだ。口角が上がってる自分に。
数字上は何も変わってない。寧ろ会社にクレームでも入れられるかもしれないくらい、まずい事態だ。
でも僕は笑ってたんだ。

そしてこうも思った。
そうか、、兄さんたちもこんな気持ちを持ちながらやってるんだな、って。
そんなこと聞いたことなかった。だってこんな体験、想像すらしてないんだから。
これが高揚ってやつなのか。どうやら僕が持ってたプライドってのとは次元が違うな。

多分、そんなものはいらなかったんだ。生きるためにやるべきことをやるだけ。
ただその覚悟があればよかったんだ。

その考えが合ってるのか分からない。けれどもそれから僕は息を吸うように次の家へと向かっていた。
勿論、動悸はしていた。でもそれでいいと思った。





って思ってるだろうアシナガハチとベランダで格闘してきました。

最近はですね、黄砂と花粉が酷くて洗濯物はずっと部屋干しだったんですが、久しぶりにベランダに行ったらそこで発見ですよ。
しっかり働いて新居を作ろうとするアシナガバチさんに。
当然、御退去していただきました。
けれども彼も必死でしてね。。。二回ほど戻ってきましたが、棒をフルスイングして追っ払いました。
もう戻ってきちゃダメだぞ。。

でも何かどことなく健気な姿が新入社員みたいに見えたので、パパパっとテキトーに書いてみましたとさ。

丁度ネタがなかったのでありがとうかなw

では今日はこれにて。

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