氷が鳴る時



ここ最近は気温が上がってきた。
もはや冬の気配は我が家のこたつのみ、というくらいであり、あちらほちらで春が感じられる。
春といえば気温や桜、花粉など自然に影響されるものが多いけれども、なにもそれだけではない。

例えばコンビニでコーヒーを買う時、ホット一択だったのが「あ、何となくアイス飲みたいな」と思った瞬間。これも立派な春の兆しである。付け加えるなら、あくまで私個人の、でもあるが。




ホットとアイス。単に頭文字が違うだけなのに二つのコーヒーは全くといっていいほど別物だ。
その要因は恐らく飲み方。口に入る量が圧倒的に違う。私のような猫舌者は特に、ね。
そういうわけで私がアイスの方が好みであるのは自然の流れ。そしてそんな私にとって春の到来はありがたいのも自然の摂理。

今日もコンビニで一つ注文。専ら飲むのはミルクだけいれるシュガーレス。



そういえばいつからこの黒い液体の美味しさに気付いたのかな。
私が中学生の頃、ジョージアから「エメラルドマウンテン」が発売されたような記憶がある。当時、カズマサくんがエメマンのCMのセリフをモノマネして、ギャハギャハ笑ってた。

でも当時はコーヒーを美味しいと思ったことはなく、「なんであんな苦いもの飲んでんだ?」って思ってたくらい。
今となってはあんな甘いエメマンですらその印象だったのだから、シュガーレスなんてマグマを飲むようなもの。ましてやブラックなんて悪魔の生き血レベルの想像だった。




そんな私が今はマグマを飲んでいる。

グビグビ飲んでいる。

なんなら時々、生き血も飲んでいる。

こうやって書いていると昨年の秋に尿管結石になった原因の一つが分かったような気がした。

味覚とは面白いものだ。もしかしたら10年後の私は毎日パクチーをボリボリかじって、練乳チューブをくわえているのかもしれないな。




あれから数十年経った。
スッと喉を流れるコーヒーの美味しさにも気付いた。
この感覚とちょっぴりの幸福感。この一時の愛おしさを知れたのなら、歳を重ねるというのは良いことなのかもしれないし、中学生の頃に戻りたいなんて薄れてもいく。

仕事や何かに役立つような英知でなくとも、小さな想いだけで人は見ている世界に色をつけることが出来る。それが人生の1ページになることはないかもしれないけど、その積み重ねが人生の幸福につながるかもしれない。

ま、そんなことは分からないけど。
でもミルク入のアイスコーヒーを好んでいる私がいるのは事実。それでいい。




氷が動いた。
聞こえないけどカランって音がした気がした。いや、カッコつけて音がしたように脳内変換しただけだろう。こんな部分はいつまで経っても中学生のまんま。

それも私。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

コメントは日本語で入力してください。(スパム対策)

CAPTCHA

目次