1988年。
少年はまだ小学生だった。当時の記憶は正直言ってさほど覚えていない。しかし少年を虜にした存在については覚えている。
最早、人類の世界遺産とも言ってよいだろう稀代の名機器。
その名は「ファミリーコンピュータ」。
通称「ファミコン」。
言わずと知れた大ヒットコンシューマゲーム機だ。
少年はそのファミコンのコントローラーを片手に多くの冒険に出た。
時に槍方手に魔界に出向き、
時に南極のひたすら歩き、
そして時にキノコを食べて大きくなり。
少年の前には小さなブラウン管が入った箱があっただけなのだが、きっとその眼と頭には違う世界が広がっていたに違いない。
その年の2月。
数えきれない冒険を繰り返していた少年は新たな世界へと足を踏み入れる。
その日が寒かったのか、どんな日だったのかハッキリ言って覚えていない。
しかしある光景は覚えている。
夜にTVを見ていたんだと思う。
するとガラガラっと玄関の引き戸が開く音がした。
恐らく父親だろう。少年は気にも留めず、TVを引き続き見ている。
しかしリビングに誰も入ってこない。
恐らく兄弟も同じようにTVを見ていただろうが、誰もそれを気にしない。
けれども何故か少年は気になったのだ。
自然と玄関へと向かう。
玄関には誰もいない。
しかし明らかにいつもと違う光景がそこにはあった。
ファミコンのカセットだ。
カセットが誰もいない玄関のど真ん中に置かれていた。
そのカセットの名は「ドラゴンクエストⅢ」
これは本当に覚えている。
何度も見た玄関の敷物の真ん中に、あの箱があった光景が忘れられない。
少年は焦った。
そりゃそうだろう。
音がしたから確認しに行ったら、自分が欲しかったカセットだけがそこにあったんだから。
今思えば恐怖だ。良く泣かなかったな、と褒めてあげたい。
しかし少年は少年なのだ。
焦りよりも好奇心が勝る。
恐怖よりも喜びが上回るのだ。
こみ上げてくる興奮を抑えられず、駆け足でファミコンがある部屋へ。
多分、夜はゲームしちゃいけないルールとかあったはずだが、そんなの守れやしない。
そしてそこから伝説は始まった。
余談だか後で父に聞くと、仕事で帰るのが遅くなるのは分かっていたので、合間にカセットだけ家に持って帰ってきてくれたとのこと。
父にKANSHA。
その後、どんな冒険を繰り広げたかは説明不要だろう。多分、全国の少年少女と同じ。
ゲーム内では死線を乗り越え、幾多の強敵と戦ってきた。
ゲーム外では呪いのトラウマサウンドに心と体を痛めつけられ、多くの涙を流してきた。
余談だが少年には兄がいた。そして兄も同じ冒険をしていたので、この呪いの音楽が聞こえる度にこう思ってた。
「やめて、、3ばんのせーぶはのこしてて・・」
「あーーー!?兄ちゃん、ごめん・・」
と。
あれから35年以上の月日が流れた。
少年は大人になり、そして良い歳になった。
いつしか冒険の回数は減っていった。それでも心の中ではまた旅に出たいと願っていた。
人生は不思議だ。
想いは時に形となり、そして何故か見たことある光景を目にする。
そう、
35年前と同じ光景を。
正確に言えば場所が違う。もっと正確に言えば入ってるカセットも違う。
けれども35年前もそして今も、玄関に置いてあるものは「ドラゴンクエストⅢ」なのだ。
冒険。
また冒険に出られるんだ。
この歳になって?
いや、この歳まで生きられたんだからまた冒険に行けるんだ。
まだ40代といえども、健康なのが普通ではない。ここまで生きてこれたから再び「ドラゴンクエストⅢ」に出会えた。
これもKANSHAしかないな。
ちょっと緊張した手で、そっと封を開ける。
危ない危ない。
ふいに泣きそうになったわ。
身体がブルブルッと震えた。
一気に、なんて無理なほど溢れでる当時の思い出が私の身体を震わせた。
ダメだって。
開けてすぐ目に入るこの内絵は泣かせるって。
だからダメだって。
ディスク取ってスーファミ版でもう一回泣かせるのは反則だって。
世はダウンロードが主流なのかもしれない。
けれども私はどうも物理派なようで。
かさばるとか抜きで、モノとして手に入れたい。
どうやらその想いが副産物を実らせたようだ。
まぁ今日はさすがにプレイ出来ません。
多分、全てを解放するのは明日になるでしょう。
さぁ、舞台は整った。
ここから始まる。
もう一度、始まる。
けれども同じ道じゃない。
それでも懐かしさ溢れる道だと思う。
あの頃の少年に伝えたい。
「大人になっても冒険は始まるぞ」と。
待ってろよ、ゾーマ。。。は気が早いか。
待ってろよ、バラモス。。。も一緒か。
え~とえとえと・・・
待ってろよアリアハン国王!
(これなら週末に会えるw)
今日はこの辺で。
ではでは~
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